「骨格ストレート」への言及、ルッキズムと隣り合わせ問題
こんにちは、イメコンオタクの社会人です。
今回は雑記なので、以下常体で記載します。
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ここ数日、イメージコンサルティング(以下イメコンと呼称)、特に骨格診断への批判がなされている。
発端は、先日行われた日本アカデミー賞授賞式での一幕だった。
主演女優賞を受賞した長澤まさみのドレスに対するマイナスなコメントが多くツイートされていたのだ。
「彼女の骨格を無視したスタイリングだが、顔の良さでカバーしている」
「彼女のドレスは骨格ストレートには合わない」
「長澤まさみ、骨格ストレートなのにパフスリーブだから太って見える」
以上のように、「骨格ストレート」というワードが否定的な意味を帯びた単語として飛び交っていた。
この現象に対して、複数の大手アカウントがルッキズムの観点から批判を行ったのだ。
当該ツイートは、「骨格 長澤まさみ」「骨格 他人」とか適当に検索してくれればヒットするので、引用は控える。
ちなみに、今回の彼女のドレスに彼女自身の意思が反映されているのか、それともスタイリストの強い意図があったのかは不明だが、彼女が件のドレスを着て授賞式に出席したことに対して何かしらのイチャモンをつける行為は基本的にお節介でありただの鬱陶しい視聴者以外の何者でもないことは明記しておく。
その上で、上記のツイートの応酬を行なった方々に対して意見を述べたい。
ちなみに、骨格ストレート、ひいては骨格診断に関しては、詳しく説明されている文章を読んで欲しい。
要約すると、骨格診断とは人間の体型を3タイプに分類し、似合うファッションのシルエットや素材感を提案してくれるというサービスだ。
この骨格診断において、「ルッキズムを助長する」という批判は数年前からなされてきたが、大手アカウントが強い口調で言及したことで明るみに出たように思う。
今回の現象から見えてくる問題としては何点か存在する。
まず、日本における病的な痩せ信仰について。
骨格診断云々は一旦置いておいて、そもそも日本女性は痩せていることに意義を見出す(または、他者や男性からそう見出される)場合が多い。
中高生の頃から雑誌のダイエット特集やコンプレックス広告と呼ばれる醜悪な映像によって刷り込みが行われ、「痩せていない女は女にあらず」というレベルにまで追い詰められている。
そして、骨格ストレートは基本的に身体に厚みがある体格の人が多い(いわゆる、鳩胸)ため、普通に過ごしているだけでは華奢にはなりづらい体格である。
こういった身体的特徴から、骨格ストレートは「負け組」であるとの理解がSNS上で浸透している。
これは非常に深刻なルッキズムだ。
そしてこの「負け組」の風潮を作り出しているのは、紛れもなく、骨格ストレート診断を受けた女性たちなのだ。
そしてこの風潮を利用してSNS上で自社開発のダイエット商法を展開する女性(に扮したステマアカウント?)も現れ、現在イメコン界隈は混迷を極めている。
このクソみてえな風潮に対し、私は過去に以下のツイートで意見表明をしたことがある。
骨格ストレートの人に対するfat shamingやめて〜「骨格ストレートは痩せたら綺麗になるから痩せよう!」みたいなのもfat shamingだしルッキズムだしダメだよ。
— リビ🐍 (@my_pgtjawmd) 2020年10月14日
もしかしたら自虐なのかもしれないけど、あなたと同じ属性の人にガッツリダメージ与えてるので…
そう、いくら自虐だったとしても、これは骨格ストレートに対するファット・シェイミングだ。自分の体型に満足している骨格ストレートの人にとっては大きなお世話だし、「自分が太っているのではないか…」と密かに気にしている骨格ストレートの人には過剰なダイエットに走らせる危険性がある。
ここで表明したいのは、骨格診断で判明する身体的特徴に短所も長所もない。
そして、洋服を着る時に「絶対に痩せて見えなければならない」というルールは存在しない。
誰が決めたんだそのルールは…
そのため、骨格ストレートは負け組という風潮は全くもって不適切である。
続いて、骨格診断、ひいてはイメコンへの理解の浅薄さについて。
このトピックは、骨格ストレートを負け組扱いするSNSユーザーと、そして骨格診断についてルッキズム的観点で批判を行なった大手アカウント両サイドへの指摘を込めている。
骨格診断は、先に述べた通り、似合うファッションを提案するサービスの一つだ。
あくまでファッションに迷いがある人、自分の身体にフィットするファッションが知りたい人がターゲットなのである。
そのため、骨格診断に関しては体型の特徴だけでなくファッションもセットで語られるべきなのだ。
今回長澤まさみのドレスに多くのコメントが寄せられた理由としては「体型に合っていない」からである。
実は彼女のドレスは過去にも不評だったことがあり、ドレス選択のセンスに対して指摘が入ったことが何度もある。
そして私が見たところ、彼女の骨格を揶揄するというよりも「このドレスを選択したスタイリストは誰だ」という観点で批判している人が多いように感じた。この文脈で「彼女は骨格ストレートなのにこのドレスは似合わない」という発言が出たのだろう。
この発言には、「骨格ストレートという彼女の生まれ持った骨格の特徴を全く生かさないスタイリングだ」という意図が込められていたと予想する。上記の発言がイメコンに対して正しい知識を持つ人によるものならば、この指摘が100%ルッキズムや痩せ信仰から発生した発言というわけではないと予想する。
ただし、「顔の良さでカバーしている」「太って見える」という趣旨の発言は、ルッキズムの定義に当てはまる発言である。
現代において、美の基準はもはや均質ではない。このドレスは、長澤まさみの「顔の良さ」によってカバーされているわけではないし、「太って見える」からダメというわけではない。
ルッキズムの定義を「生来の身体的特徴によって美人/不美人を分断する主義」とするならば、ドレス、メイク、髪型等、個人の裁量で変更できる部分に関して指摘することはルッキズムに抵触しない。
そのため、彼女に似合っていないという理由でドレス選択のセンスを批判することが倫理的に誤っていたり、ポリティカル・コレクトネスに配慮していないとは一概に言えない、というのが私の意見だ。
もちろん長澤まさみの骨格に言及してドレスが素敵に見えないと指摘した人たちがお節介であることには変わりないし、他人の選択にケチをつけることに嫌悪感を覚えた、という意見であれば納得はできる。
しかし、「彼女の骨格に言及するのやめな」「他人の容姿に対して無遠慮に踏み込んでいる」など、本質と少しずれた主張を強い口調で行う方が複数見受けられる。
イメコンへの理解が不足しているにも関わらず叱責に近い形で指摘を行い、界隈全体の口が塞がれそうになっている現状に対しては少しモヤモヤを感じている。
以上の点を総括すると、
- 痩せ信仰(骨格ストレート負け組説)とルッキズムは醜悪。この考え方のもと情報発信を行っているアカウントは今すぐ自分の考えを改めるべき。
- イメコンは、個人で選択できる部分へのアプローチである。イメコンが視覚的な話だからという理由でルッキズムに直結するとは限らない。
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以上が私の正直な気持ちです。
ちなみに私もNCTのPD予想と題して、彼らの写真を色々用いて似合うスタイリングを分析した記事を出しています。
この記事も、見る人が見ればルッキズムなのかもしれませんね。
そうかもしれません。視覚的情報に言及してしまっているので。
一応言い訳をすると、私は記事やツイートの中で意識的に「スタイリング」「衣装」という言葉を使うようにしています。
アーティスト個人の服の選択や顔の造形・体型を貶める行為は決してしませんし、スタイリングチームと協業して作り上げたファッションの世界観と成果物を評価するために執筆しています。ご理解いただけると嬉しいです。
ではみなさん、これからも健全にイメコンを楽しんでいきましょう。
お読みいただきありがとうございました。
🏷筆者のSNSアカウントは以下の通りです。